セミナー情報

歯科衛生士ライターmonさんより『噛む力』の感想が届きました

2021年1月17日(日)に行われたDHスタディグループHygeia主催のオンラインセミナーに参加しました。今回は尊敬する増田純一先生と高島隆太郎先生のご講演とお聞きし、とても楽しみにしていたんです!

今回のテーマは『噛む力』口腔機能についてのお話です。

お二方は『0歳からの健口長寿研究会』を牽引されており

健口長寿のための口腔育成5箇条
  1. 良好な口腔育成につとめよう
  2. 良好な乳歯原型を育てよう
  3. 口腔育成は出生時にすでに始まっていることを知ろう
  4. 気になる乳歯原型は早期発見・早期指導しよう
  5. 良好な食習慣、運動習慣を確立させよう

 

 

※この他に、子育てにかかわる専門職向け・お父さんお母さん向けの5箇条もあります

これらをテーマに、歯科医療従事者はもちろん、幅広い分野にわたる業種や、まさに子育て真っ只中のお父さん・お母さん向けのセミナーも開催されています。

と・に・か・く
子どもの口腔機能育成に関してのエキスパートといえるお二方なのです!!!

小児歯科専門勤務だった筆者は、『子どものお口のことはお任せ♪』だと思っていたのですが、いざ母親になって3人の子育てをしてみると、3人とも口腔機能は思うように育ちませんでした…(泣)

増田先生に出会ったのが、三女が3歳の時。
時すでに遅し...。
上の2人はすでに永久歯列、三女は口蓋の形がもうすでに狭かった。
もっと早く、いや、何なら1人目妊娠前からこのことを知りたかった!!!

今回はそんな貴重なお話をしてくださる先生方のご講話の感想を、僭越ながらまとめさせていただきました。

午前の部:幼児の窒息事故を防止する鍵は歯科が握っている

タカシマデンタルクリニック 院長 高島隆太郎先生

まずは高島先生によるご講話です。
「子どもの窒息事故」を通じて、原因や予防策はもちろん、『歯科医療』との関連性について詳しくお話がありました。

13年前の2008年9月、1歳児がこんにゃくゼリーをのどに詰まらせて窒息死するという痛ましい事故のお話からスタート。当時我が子も2歳と4歳だったので、衝撃のニュースは他人事ではなく、今もそのニュースを鮮明に覚えています。

先生も仰られていましたが、この後こんにゃくゼリーは対策として、乳幼児とお年寄り向けに注意書きが記載されたり、クラッシュタイプやチューブタイプのものが販売されたのを記憶しています。しかし昨年2020年、4歳児が保育園の給食で出されたブドウを喉に詰まらせて死亡する窒息事故が起こってしまったのです。

根本的な原因が解決していないため繰り返される窒息事故

原因の食材に関しての対策は行われていても、窒息死問題の根底にある問題が解決されずに来てしまっている。その現状が、再度窒息事故での死亡という痛ましい悲劇を産んでいるのでは?と高島先生は問題提起されました。

世論は食材の形状や大きさ、職員の対応への問題提起は行いますが、幼児側の要因は話題になっていません。幼児側の要因に目を向けない風潮により、窒息死問題の根底にある問題が解決されず、いつまでも再発防止できないのではないかということなのです。

実は「窒息」は口腔機能の未成熟が要因

高島先生が提起されたのは、『適切に口腔育成すれば窒息事故は再発防止できる』ということです。
もちろん窒息事故は幼児だけが問題ではなく、食事の環境や食材の形状といった要素もゼロではありません。しかしそこに大きな要因として、幼児の口腔機能の未熟さ、食物に対する経験値の少なさ、食事の際の姿勢、その日の体調など、『幼児側の発達の質』がある。と仰られていました。

ということは…
歯科医療従事者が根拠を示して訴えていかなくては、再発はいつまでたっても防げないのではないでしょうか?

高島先生の「まとめ」を受けて感じた熱意!

セミナーの中では、幼児側の3つの要因の細かい内容や、動画を用いての「飲み込み動作」や咽頭・喉頭・舌骨上筋群などの正しい動きの解説なども細かく・分かりやすく解説していただきました。

また、幼児に窒息事故が多い理由を歯科的観点から解説され、最終的に一番大切なのは『保護者立会いのもと、さまざまな食品を経験させることで、口腔機能、食物認知、物性認知能力を発育させること』と締めくくられました。

動画では、離乳食前の赤ちゃんの時期からスルメを与え、次に大きめのイチゴ、スティック状の茹で野菜、そして球状でツルツルしたブドウへと成長と共に食材が移行します。
だんだん食材を変化させながら、目で見て・自らの手で口へ運ぶことで『食品を経験しつくす体験を子育ての中に取り入れる』という経験をさせることの大切さを、動画でもご紹介くださいました。

最終的に2歳に成長した動画のお子さんは、事故の原因となったブドウを自ら口に運び、噛み切り、皮を器用に向いて食べていたのにもビックリ!!!

『口腔機能がしっかり育てば、窒息につながる事例はなくなっていく』そのことを多くの人に伝えたい!と改めて感じさせていただけるきっかけとなる、熱意あるご講話でした☆彡

午後の部:誰にでもできるシンプル歯並び法

マスダ小児矯正歯科医院 院長 増田純一先生

引き続き、午後は増田純一先生によるご講話です。
増田先生の口腔機能育成に関しては、3年程前から個人的にも興味があり、何度か勉強会にも参加させていただいたり、著書を拝読している一ファンの作者です♥

増田先生の講話の中心は「良好な乳歯原型を育てよう」ということ。
歯が無い時から乳歯列が揃う時の形態と機能の調和がとれているかどうかを、先生が長年の経験の中で集められたデータを基に、独自で考案された「◯型口蓋、△型口蓋、V型口蓋」に当てはめて永久歯への交換がどう行われるかを研究されていることを基にお話しくださいました。

そして筆者が一番感銘を受けた増田先生のお考えが「常に子どものことを中心に考えての歯列矯正」であるということです。

増田先生の子どもたちへの「愛」

中には「歯並びをいかに整えるかを中心に矯正治療をしている」歯科医師もいると思います。一見聞くとそれはそれで正しい考えなので間違いではありません。
しかし増田先生は、乱れた永久歯の歯並びを矯正力で整えることはできるが、それは地球を逆回転させているようなもの。なぜその歯並びになってしまったのか、根本的な原因や背景が後回しでは治療の順序が逆だと言われました。

そして「その子本来の生涯にわたる歯列・咬合は、その子自身の良好な咀嚼機能によって支えられ維持されていく。歯科医療従事者は、その子自身の力で本来持っている自然な美しい咬合を作れるように、ほんの少し手助けをする」ということ。とも言われていました。

増田先生は「矯正の専門ではないのに偉そうなことを言ってしまいました」と謙遜されます。でも、母親でもある作者は、本当に涙が出るほど嬉しい感動のお言葉でした!!!
母親はつい、子どもの歯並びが悪くなった原因を自分の食事のせい?離乳食が上手くいかなかったから?と責めてしまうと思うんです。
歯科医療従事者が「一緒にお子さんの成長の中で改善していこう」と寄り添ってくれることが、どれだけ励みになるか♥

無理に歯並びを矯正するのではなく、本来育つべき時期に不具合を起こしている部分に成長を利用して手助けを施すだけ。あとはその子らしい自然な乳歯原型(口蓋の形)の姿を持っていれば、おのずと成長するので見守りながら観察を続けるのだそうです。
先生のお話の中に、「子どもに無理をさせずにできるだけ自然に」という愛が感じられるお話でした。

大切なのは、「いかに早い段階で不具合に気づき、適切な対処をおこなうか」なんですね。
でも、それは素人(お父さんやお母さん)では難しい面も多いため、やはり気づくことができる歯科医療従事者や、子どもの発育に関わる業種の人たちが増え、伝えていくことが大切だと感じました。

人の歯並びはどうやってできあがっているのか

お話しの中盤は増田先生の考案された歯列原型のパターン
◯型口蓋、△型口蓋、V型口蓋
のお話しと症例検討が主な内容でした。

先生のお考えでは、乳歯も永久歯も4つの節目を持って成長するとのこと。
乳歯は無歯期、前歯期、奥歯期、完成期。
永久歯は永久無歯期、永久前歯期、永久側方歯期、永久完成期といった分類です。

その中でも乳歯の4期は咀嚼機能を効率的に獲得するためにあり、この4期で作られる乳歯列期の機能と形態を「乳歯原型」と表されていました。
そしてこの乳歯原型をそのまま引きずって、永久歯の歯並びに影響してくるそうなのです。

型が最も理想の歯列原型であり、画像も見せてくださいましたが、発育空隙があるきりっと引き締まった口元をしていました。
それが増田先生の長年の症例のデータによれば、小学校1、2年時期に△型口蓋であれば6年生時には約80%、V型口蓋であれば100%不正咬合となるのだそうです。

最も重要なのは乳歯も永久歯も「前歯期」で、不自然な乳歯原型にいかに気付くかという、
ターニングポイントをスルーされると後が大変とも仰っていました。

子ども自身の縄文時代の子どもも、現代子の子どもも、最初のスタートは同じ。
それが食生活など日々積み重なった歪が10年後に現れるのが不正咬合であるということなんですね。

お恥ずかしい話、作者が小児歯科で勤務していた時代にお子さんたちの不正咬合に気づけていたとしても、適切なアプローチはできていなかったと思います。
医院の方針や診療体制もありますが、もっと早くこのことを知っていて、1人でも多くのお子さんや親御さんへ伝えることができていたら…とお話を伺いながら感じました。

とにかくスゴイ! 増田先生の症例検討

そして後半は、△型口蓋やV型口蓋、悪習癖などによる不正歯列の症例をたくさん紹介してくださいました。
そして1つずつの「気づくポイント」として、見るべきところやアプローチはこうする、といった細かな部分、実際先生が行われてどう変化したのか、その子の背景にはどんな環境があったのかなどもお教えくださいました。

小児に携わっていると、本当に今の子どもたちは「歯並びに問題なし」と言えるお子さんの方が少ない気がします。
その選別はできたとしても、アプローチせずに時が流れ、永久歯列になるのを待って矯正治療を促す…こんな時代に働いてきました。

先生の子どもたちの歯並びを自然に整うように導いてあげたいと思う愛情と、ご自身の経験を余すことなく興味を持ったさまざまな人へ伝えるという愛情。
とにかく先生のお人柄に心打たれながら拝聴させていただいた気がします。

そんな本日講演された先生方が手掛ける『0歳からの健口長寿研究会』がアツい!

本日ご講演された増田先生と高島先生は、お母さんたちに口腔機能を育てる大切さを伝えられる専門職が増えれば。また、臨床の中で子供たちの口腔を診るヒントになればという想いで『0歳からの健口長寿研究会』を立ち上げ、活動していらっしゃいます。

今年5月に口腔育成指導者のためのスタンダード講座があるとお聞きし、歯科医療従事者以外の他職種の方でも理解できる内容とのことで、ぜひ多くの方にシェアしたいと思いました!

【日程】

1日目 基礎編 2021年5月23日(日)10:00~17:00
2日目 実践編 2021年5月30日(日)10:00~17:00

認定資格制度あり

➀健口教育指導士 一般の方や同業種の方に取得してもらえる口腔育成の大切さを伝える
②臨床認定歯科衛生士 症例報告を行い、伝える能力がある歯科衛生士
③臨床認定歯科医院 歯科医院全体で口腔育成に関わられている

作者も参加させて頂きたいと思った、今後も注目の研究会です!
現在、臨床を離れ、Webライターとして活動している私ですが、歯科情報サイトで子育て世代のパパ・ママ向けに記事を書く機会も多く頂いています。

健口教育指導士として専門的な知識を幅広く周知することの方法のひとつとして、Web記事を活用するというのも昨今のネット社会の現代で子育てしているお父さん・お母さんに届けるために活かせるのでは?と感じたからです。

専門家だけでなく、誰でも理解できるようにと考えられ発信されている『0歳からの健口長寿研究会』は、今後、認定制度取得の医院がマップ上で確認できるようにもなるようですよ♪
これからの『0歳からの健口長寿研究会』の活動から目が離せない!と思った筆者なのでした(o^―^o)

ご希望者多数により、見逃し配信いたしました!!(申し込み終了しました)

 

リンク

2021年1月17日『噛む力』ご案内ページ

0歳からの健口長寿研究会ホームページはこちら